お墓とは?霊園の基礎知識
「お墓」とひとくちに言っても、かつてのようにそのイメージは一様ではありません。昔ながらの地面を掘って納骨し、墓石を立てるタイプ、屋内のロッカーにお骨を納めるタイプ、お骨を自動的に移動させてお参りするタイプなど、さまざま納骨の形式があります。その理由としては土地の高騰化による費用の問題と、地方の過疎化で都市でもお墓が持ちたいという要望が増えたという事情があります。ライフスタイルによって、お墓の選択肢が変わってきているのです。ここでは、『屋外墓地』についてご紹介していきます。詳しい名称、費用相場、屋内墓地のメリット、デメリット、メンテナンスについてもご案内しますので、ぜひお墓選びの参考にしてみてください。
お墓の種類
お墓には、主に和墓と洋墓の2つの種類があります。
1 和墓
タテ長の墓石が立つ日本人には見慣れた形式のお墓です。三段墓とも言われており上から家名などを掘る竿石、次に上台石、中台石の三段階になっています。その下にさらに芝石(下台石)を着けて四段とする場合もあります。
2 洋墓
横長の墓石を立てる洋風のお墓です。高さがない分安定感があります。一族のお名前だけではなく、メッセージやイラストなどを彫り込めるなど自由度が高く、近年では、洋墓を選ぶ割合は過半数を超えるとか。
そのほか、どちらの枠にも入らないデザイン型のお墓も増えてきました。こちらはご遺族が任意のモチーフや形を発注できる場合もあれば、ある程度定型があり、そこから選ぶ場合もあります。
墓石の形
墓石の形は、以下が代表的なものです。
1 標準型
2 スリン型
竿石の下に蓮の花の形をしたざぶとんのような石があります。
3 上下蓮型
蓮の花をかたどった蓮華台と蓮華返り花とで台座がつくられています。
4 トキン型(神道型)
竿石の頭部を角錐状にしたもの。神道で使う八足台がついています。
5 五輪塔型
五重塔のような形。霊魂が成仏する姿を形にしたと言われています。宝玉、半月、三角、丸、四角の5種類の石を合わせてます。
6 高級型
標準型に水垂、亀腹、丸面取り加工を施しています。
7 大名墓
和型の竿石の上に卒塔婆をのせたもの。権威の表れで、かつては大名専用でした。
8 香箱型
香箱を上にのせたようなタイプ。曲線が美しい墓石です。
寿陵墓 生前墓について
終活ブームもある昨今は、寿陵墓=生前墓の準備をする人が増えてきました。古代中国では「生前にお墓を建てることで長寿になる」と縁起担ぎとして広まりましたが、少子化、不況が問題となる現代の日本にも適した習慣であると言えます。亡くなってから慌てるよりも、準備をして安心しておくことで、生き生きと日々を過ごせるのではないでしょうか。お墓は固定施資産税がかかりませんので、生前に購入しても相続の問題はありません。ちなみに、戒名も生前に受けることができます。
文字・家紋
墓石の表面に刻まれる文字を『前文字』と呼びます。「○○の家之墓」「○○家先祖代々之墓」など家系を示すものや、戒名を入れる場合、「南無阿弥陀仏」南無妙法蓮華経」「南無釈迦牟尼仏」などのお経が彫刻される場合もあります。
家紋は、お墓の上台に刻むのが一般的ですが、現代ではご自身の先祖の家紋を知らない方が多くなりました。家紋は似たような図案が多く、うろ覚えだと間違えてしまいます。古くに建てられたお墓であれば墓石で正しい家紋が確認できます。また、どうしても元々の家紋が分からない場合は、同じ名字の代表的な図案を使ってもいいですし、新しくオリジナルの図案を作っても構いません。
お墓の名称
お墓には、日本人が御先祖様から継承してきた宗教文化が反映されています。お墓に託された意味を知ることで、先人たちが大切にしてきた思いも引き継ぐことができるのではないでしょうか。御先祖様を奉る場所としてふさわしいお墓を選ぶためにも、お墓の各部分の名称や由来などを知っておきましょう。
1 石碑の1 竿石(さおいし)(棹石・仏石・天石)
お墓の墓石といえば皆さんこの部分を思い浮かべるでしょう。お墓の一番上にあるタテ長の石です。「先祖代々之墓」「○○家」などの言葉、没年月日やイラストなどを彫刻します。近年は洋墓のヨコ型の墓石もあります。
2 石碑の2 上台(じょうだい・うわだい)(人石)
竿石を支えている石で、家紋や名字を刻みます。蓮の花の形にデザインされているものもあります。
3 石碑の3 中台(ちゅうだい)(下台)
上台の下にあり、上水鉢や花鉢がついている場合もあります。ここまでの3つを合わせて石碑といい、お釈迦様のお姿を現していると言われています。
4 芝台(しばだい)下台(しただい)
水たまりや泥汚れから石碑を守るために、中台の下に置く台です。お墓を一段高く見せることで、格調高いお墓に見せることができます。
5 上水鉢(うわみずばち)(水鉢)、香炉(こうろ)、花鉢(はなばち)(花立)
仏様へお水、線香、お花をお供えするための道具です。内側が錆びないようにステンレスになっているものもあります。地域や宗派によって線香を立てるところ、寝かせるところがあります。
6 墓誌(ぼし)(墓碑・墓誌・霊標・法名碑)
お墓に入っている方の名前、戒名、没年月日などを記載する石碑です。合同墓では、墓誌を墓石の扱いとする場合があります。墓誌を設けない場合は、石塔、位牌、過去帳を代替とします。
7 塔婆立(とうばだて)
塔婆板を立てるものです。金属製、木製もありますが、ほとんどの場合は金属製です。宗派によっては置かない場合もあります。
8 外柵(がいさく)(境界石(きょうかいせき)巻石(まきいし))
境界石と巻石でお墓の周りを囲み、お隣とのお墓との領域を示します。これらと基礎となる部分をまとめて外柵といいます。お墓の耐久性を高める役割もあり、装飾品や付属品を入れる場合もあります。境界石は、土と浄土の境界となる、という意味も持っています。
9 カロート(唐櫃)
お墓の一番重要な部分とも言える、納骨室です。外柵と一体化している場合が多く、納骨部分はお墓の地下部分に埋め込まれています。壺ごとお骨を中に納めますが、フタの開閉は自由にできますので、たまに点検もかねて空気の入れ換えをすると良いでしょう。
10 灯篭(とうろう)
仏様に明かりを捧げるための仏具ですが、墓内を照らすという実用的な道具でもありました。現代では実際にロウソクを灯す機会は少なく、太陽と月の光を模した意匠を施すことによって、常に明かりが点いている状態を表現しています。
11 お地蔵様(おじぞうさま)
水子供養や幼いお子様の供養のために立てられるのが一般的ですが、あの世で苦しむことのないように地蔵菩薩様に救っていただく、という意味を込めて立てられることもあります。
12 物置石(ものおきいし)(物置台)
お墓参り来た方の手荷物を置くための石です。線香、物価、ライター、ロウソクなどを置ける物から、椅子としても使えるようなサイズの物までさまざまな種類があり、装飾としての彫刻も施すことができます。
費用・相場
屋外のお墓を立てるには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。お墓にかかる費用は、大きくわけて3つあります。
1 墓石代──100万円~300万円程度
お墓本体を購入する費用です。
2 永代使用料(区画使用料)──30万円~200万円程度
霊園やお寺の墓地の中で、割り当てられたスペースをお墓として使用するための料金です。土地が購入できるわけではありません。
─3 管理料─5000円~2万円程度/年
永代使用をしている間に霊園やお寺にお墓を管理してもらう費用です。お墓周辺の清掃や共用施設の維持管理を代行してもらいます。ただし、掃除費用を別とする霊園・お寺もあります。
墓石の費用の平均は130万円前後と言われていますが、墓地の種類、墓石の形状、宗派、石の種類等で価格はかなり違ってきます。お寺や霊園が石材店を指定する場合もあり、価格が選びにくいケースもあります。前もって信頼できる石材店を見つけて、お寺や霊園を紹介していただくのもひとつの手です。
永代使用料は平均70万円と言われていますが、その土地や宗派などで30万円前後~200万円以上と、かなり幅があります。エリアでいうと、東京都の平均は120万円ほどなのに対して、福岡県では65万円程度と、倍近くもの差があります。
管理費は金額だけ見ると5000~2万円程度/年と、とてもお安く感じます。ですが、埋葬料、入檀料、法要料、お花代、回忌供養代など、お布施も含めてさまざまな費用が別途かかるため、とくに葬儀や法要を行う際は数十万円程度の費用が必要となります。
お墓を立てる費用の総額としては、130~500万円程度とみてよいでしょう。
また、公営のお墓は民営よりも相場が100万ほど安くなるケースもあります。
メリット・デメリット
●屋外墓地のメリット
1 永代使用料以降は管理費のみで供養
屋内墓地の場合は三十三回忌、五十回忌など、供養の期間に制限がある場合があります。期間が過ぎると合祀され、使用権利は失ってしまうという形式が多いのです。一方屋外墓地の場合は、永代使用料を一度支払ったあとは、管理費のみで後々まで供養ができます。
2 好きなときにお参りできる
開門~閉門の時間内であれば、いつでも自由にお参りができます。屋内墓地の場合はお参り場所が共有となっているケースがほとんどで、予約が必要だったり、お盆時期は当日待たされる場合もあります。屋外墓地であれば、ご家族以外の方々もより気軽にお参りができます。
3 お供え物の自由度が高い
現代は食べ物はお供えしたあとに持ち帰ることが義務づけられていたりなど、お供え物に制限が課せられるようになりました。とはいえ、まだまだ屋外墓地は屋内に比べて自由度が高いと言えます。線香に火を灯してのお供えは、ほとんどの屋内墓地では禁止されていますが、屋外墓地では香炉に置く分には制限はありません。また、仏花も持ち帰りを義務づけられているのは極く一部です。
4 季節感、開放感がある
季節感、開放感は屋外墓地の大きな魅力です。見晴らしの良い立地など、仏様のお好みに沿った風景にお墓を立てることも供養となります。
5 昔ながらのスタイル
ご高齢のご親族や伝統的なお葬式が行われる地方などでは、昔ながらの屋外のお墓に安心感を持っていただけます。
●屋外墓地のデメリット
1 費用が高額
供養の期間に制限がない分、費用が高額になります。墓石を共用したり、墓石自体を設けないケースもある屋内墓地と比較して100~300万円ほど高くなる場合もあります。
2 天候に左右される
雨や雪、荒天の場合はお参りすることが難しくなります。限られたお休みの中、スケジュールを合わせて集まったご親族が、一緒にお参りできなくなるなどのトラブルも予想されます。
3 都市部から遠い墓地が多い
広大な土地を使う墓地は、郊外や自然の多いエリアに設けられることが多いのです。市部で生活するご遺族からするとお参りが大変で、ご高齢の方など次第に足が遠のいてしまうこともあります。
4 お手入れが面倒
屋外は風雨によってお墓が汚れてしまいます。墓石の周囲の共用部はお寺や霊園の管轄として掃除をしてくれますが、墓石の汚れまではメンテナンスしてくれないケースがほとんどです。
5 後継ぎがいないご家庭の問題
後継ぎがいらっしゃらないご家庭の場合、管理料を払う人が居なくなると、無縁仏となってしまいます。お墓を引き継いだ方が元気なうちに、そのあとのことを決め、場合によってはお墓の引っ越しをしましょう。
伝統を守り続けてきたエリアにお住まいの方、ご高齢の家族がいる方は、屋外墓地がオススメです。また、価格よりもお参りの自由度を優先される方も屋外墓地の方がストレスなくご自身のリズムで供養できるのではないでしょうか。
お墓のお掃除、お手入れについて
屋外のお墓は、風雨によって汚れてしまいます。お墓参りのときには、できるかぎりお掃除をしてからお供えをしましょう。
自宅からはスポンジやぞうきん、歯ブラシくらいの柔らかく小さいブラシ、ザルや剪定ばさみなど簡単な掃除用具を持参します。通常の家庭掃除用洗剤は墓石には使用できませんので、もしどうしてもという場合は市販の墓石用洗剤を購入してください。バケツはお寺や霊園に用意してある場合がほとんどです。タワシは金ダワシではなく天然素材の物で、汚れのひどいときにのみ使用します。
お墓についたら、まず枯れたお花や線香の燃えかすなど、以前お参りしたときの残り物を取り除きましょう。香炉や花鉢などは小さいブラシで磨きます。地内の枯れ葉や雑草なども抜いてキレイにしましょう。花木を植えている場合は、ついでに剪定もしておきます。次に、濡らしたぞうきんやスポンジで墓石を上から下へ磨いていきましょう。ガンコな汚れはタワシでこすりますが、石が欠けないよう、汚れだけ優しくこするようにします。最後に静かに水を流して終了となります。敷地内の玉砂利が汚れている場合は、ザルに入てバケツの中で砂利を洗い、ゴミはすべて持ち帰ります。
洗い方の分からない特殊な石を使った墓石の場合は、石材店にお手入れの方法を確認しましょう。
お墓が壊れたら? 修繕について
石材はほかの素材よりも劣化は目立ちづらいですが、それでも長い年月の間に傷やシミがついたり、カビが発生してきます。また、地震や台風などで隙間が出たり倒れて割れてしまうケースもあります。さらに、陶器で出来た花鉢などが割れる場合もあるでしょう。また、文字の部分のペンキは長い年月を経ると剥げてきてしまいます。
お墓の修繕は、石材店や葬儀社などにお願いできます。お墓を最初に建ててくれた石材店にお願いするとスムーズでしょう。お墓の修繕費用は内容によってかなり開きがあり、外柵のメジ補修は数千円程度、香炉や花鉢の交換のみなら数千円~3万円、耐震コーキングは1~数万円、文字の塗り替えなら1~3万円、石同士の接着修正は3~5万円、墓石のズレ、傾きの直しは5~30万円、墓石の研磨だと30万円、和墓から洋墓への交換は20~50万円、そして建てえは100~300万円と、新しい墓石を買うのと変わりない金額になります。
また、ご遺骨の状態が悪くなってしまうケースもあります。虫がたかっていたり、浸水してしまった場合は変質してしまうので、万が一のことがある場合は業者に洗骨をお願いするといいでしょう。
お供え物の常識・新常識は?
お墓参りをしたときは、お供え物を用意しますが、なにを持参すればいいのか迷ってしまいますね。もちろん仏様が生前お好きだったもので構わないのですが、その中でも仏教の教えに反したり、現代のお墓事情に合わない物はお供えすることができません。お供え物にまつわるマナーを勉強しておきましょう。
お供え物の主なルールは、2つです。
1 殺生はしない
お肉やお魚をお供えすることは避けましょう。こちらは殺生を戒める意味から来ていますが、現代はカラスや動物がお供え物を荒られないように、そして腐敗して周囲の迷惑にならないように、という意味もあります。同じような理由で、ニンニク等臭いのキツい物も持って行かないことがマナーです。特にお盆の時期は殺生をしてはいけないことになっているので、気をつけましょう。
2 お花と線香・水以外は持ち帰る
食べ物は動物たちが荒らさないように、持ち帰りましょう。飲み物の缶なども錆びの原因になりますし、ペットボトル等腐敗すると破裂する可能性がある物も持ち帰ります。また、ロウソクもロウが垂れて墓石を汚す可能性があるので、消して持ち帰りましょう。墓前、または休憩所や待合室などで飲食ができるスペースがあれば、そこでお供えした食べ物をいただいても構いません。
かつては仏様のお好きな飲み物を墓石にかけるということが行われていましたが、現在では墓石を傷めるとして推奨されなくなりました。どうしてもという方は、周囲のお墓にかからないようにかけ、最後に水で清めて墓石にシミを残さないようにしましょう。